GUMMETAL(ゴムメタル)とは
ゴムメタル(GUMMETAL)は、豊通マテリアル(株)が保有する登録商標であり、トヨタ自動車(株)をはじめとするトヨタグループのシンクタンク的な役割を担う(株)豊田中央研究所において開発された材料です。
近年では、金属ガラス、メタルポリマー、スチールセラミックなど、全く異なる材料を繋げた名前の材料や製品が多く見受けられます。ゴムメタルも同じで全く異なる材料を繋げた名前となっております。
「ゴムメタルは、ゴムなのか?メタルなのか?」といった質問にお答えすると、答えはメタルです。ゴムのような非線形弾性変形を示す金属(チタン合金)であり、ゴムではありません。
一般的な金属材料は、力を加えると、その大きさに比例して伸びます。しかし、ゴムメタルは、ゴムのように力と伸びの関係が直線的な比例関係にないことから、ゴムのような金属ということで、命名されました。
GUMMETAL(ゴムメタル)の特長とは
ゴムメタルの特許には、弾性率が低く、かつ強度が高いことが、最大の特長として掲げられています。
弾性率が低い為、小さな力で変形することが可能で、かつ、強度が高い為、しなやかな性質を発揮します。
このような低弾性率と高強度を併せ持つ材料は世の中にありませんでした。
例えば、鉄は強度が高いですが、簡単に曲げることが難しい性質を持っています。また、アルミニウムは柔らかく、鉄に比べ、簡単に曲げることが可能ですが、強度が低いので、曲がったままで元に戻りません(変形)。これらに対して、ゴムメタルは、柔らかくて強いという相反する性質を、同時に実現した新しいチタン合金です。ゴムメタルの弾性率は、日常で使われているステンレス鋼の約1/5で、強度は約2倍もあります。
GUMMETAL(ゴムメタル)の応用
例えば、バネ定数が等しいコイルスプリングを作る場合、弾性率が低ければ、その分だけ巻き数が少なくて済みます。ゴムメタルは弾性率が鋼の約1/5ですので、1/5の巻き数で鋼と同じバネ定数の軽量あるいはコンパクトなスプリングが出来ることになります。
もう一つの応用は、医療における人工骨です。
人工骨には従来、チタンが使われていますが、その弾性率は人間の骨の弾性率の5倍近くあります。しかし、人工骨は本来、人間の骨と同等の弾性率を有する材料が好適なのです。その点、ゴムメタルは人間の骨に近い低弾性率で、しかも強度が高く、しなやかな特長があり、その上、生体アレルギーを起こすような成分を全く含んでいない合金設計がなされているのです。
GUMMETAL(ゴムメタル)の合金設計とは
チタン(Ti)- ニオブ(Nb)系合金では、ある組成になると低弾性になるという過去の知見に着目して、弾性率が低くなる組成を、第一原理計算という手法を使って電子論的に予測した上で、高強度化を両立できる成分系を絞り込み、さらに冷間加工プロセスと合わせて開発されたのです。
このようなゴムメタルの合金設計と特異な特性及び特性が発現する変形機構については、2003年のScience誌に論文が掲載されています。論文の中では、ゴムメタルは、それまでの金属材料では常識とされていた転位による変形とは異なるメカニズムで変形し、内部にナノサイズの弾性ひずみ場が形成されることが、特性の発現に関係していると報告されています。
この論文は、金属変形の研究者に注目され、その後は世界的に様々な教育機関との共同研究が行われており、多数の論文が発表されています。
GUMMETAL(ゴムメタル)の製品化
ゴムメタルの性質が最高に生きる使用部位はフレームの腕(専門用語: テンプル)です。長時間掛けていても痛くならない、掛けていて心地よいテンプルを目標にしました。
粉末焼結材の加工経験が無いため、先ずは溶性材の延長で加工工程を組み、冷間鍛造・圧延の試験を繰り返し行いました。その結果、徐々に加工方法が確立され、2000年4月に量産ができるまでになりました。
ゴムメタルはヤング率が45 GPaと低く、弾性範囲が広いので顔幅に関係なくフィットしてめがねが快適に掛けられる眼鏡用フレームの最高級品として扱われるようになりました。
次に商品化されたのは、スポーツ用品でした。ゴルフクラブへの当初の応用は、ウッドのフェイスでしたが、開発途中でフェイスの反発係数に上限規制がかかってしまい、ゴムメタル製が規制を超えたため、止む無く中断されました。しかし、その後はシャフトの一部に応用されるようになり、ヨネックス(YONEX)から販売されたナノVは石川遼選手も使用されていました。その他、テニスやバトミントンのラケットなどにも使用されています。
最近の応用商品の中で画期的なのは、歯科矯正ワイヤーです。約4年前から国内で販売が開始され、今では全国の矯正歯科クリニックで使用が拡大しています。その理由は、ゴムメタルのしなやかさが、歯の移動に最適な力を生み出すため、患者さんの痛みが少なく、治療期間が短くなるといったメリットがあるとのことです。また、金属アレルギー元素を含まないというメリットもあります。
GUMMETAL(ゴムメタル)のよくあるご質問
Q. ゴムメタルの成分中に、ゴムは含まれていますか?また、ゴムのように柔らかいのですか?
A. 金属ですので、ゴムの成分は含まれておりません。また、ゴムに比べると非常に硬い材料です。ゴムのような性質を示す金属ということで、ゴムメタルと命名されたチタン合金です。
Q. ゴムメタルはどこで製造しているのですか?
A. 当社は原料粉末の調達から製品までの加工をそれぞれ製造ロットにあわせて最適な調達先・加工先をコーディネートし、製造しております。
Q. ゴムメタルの特長は何ですか?
A. 柔らかく、しなやかでありながら高強度で、腰が強いといった特長を持っています。
一般のチタン合金よりも遥かに錆びにくく、軽く、人体に有害な物質を含んでおらず、限りなく人体に優しい合金です。
Q. ゴムメタルの名前の由来を教えて下さい。なぜ金属なのに「ゴム」とつくのですか?
A. 通常の金属に比べ大きく変形させても、元に戻ろうとする性質が大きいからです。また、弾性変形が直線ではなく、ゴムのように非線形な挙動を示すからです。
Q. ゴムメタルの主な成分を教えて下さい。
A. 主成分はチタンでβ系チタン合金に属します。
Q. 超弾性があるということは、形状記憶合金の一種ですか?
A. 曲がって戻るという面では似ているかも知れませんが、特性は全く違います。※1参照
Q. 現在どのような物に実用化されていますか?
A. 眼鏡、スポーツ用品(ゴルフクラブ、ラケット等)、ネジ、釣り糸等様々な物に実用化されています。
通常取扱規格
弊社にて通常取扱規格は、下表をご確認ください。(単位: mm)
GUMMETAL(ゴムメタル)規格表(センターレス材) | ||||
3.0 Φ × 2000 |
3.5 Φ × 2000 |
4.0 Φ × 2000 |
4.5 Φ × 2000 |
5.0 Φ × 2000 |
在庫の有無・数量についてはお問い合わせ下さい |
※冷間加工前提の焼鈍材となります。
※特性を発揮させる為に加工率 60 %以上(70 %推奨)の冷間加工を加える必要があります。
※板材の取り扱いはございません。